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第300話 母の名前を使わないで

مؤلف: 花柳響
last update تاريخ النشر: 2026-11-02 06:01:10

 車の窓の外では、朝の街が薄く流れていく。通勤の人たちが横断歩道に立ち、コンビニの前では配送トラックがバックランプを点けていた。三年前、夜勤明けに見ていた景色と似ているのに、今の私はスーツの上にコートを着て、榊家の車に乗っている。

 窓の外は明るいのに、車内だけ時間の流れが遅いようだった。

 変な感じがした。

 救われたからここにいる、ではない。

 自分でここまで歩いてきて、途中から律が隣を歩くようになった。それがたぶん、今いちばん正確だった。

「朝霧さん」

「今度は何ですか」

「病院に着いたら、少し待ってください」

 律はそこで言葉を切った。短い間のあと、声を落とした。

「……一人で行かないでほしい」

「どうするかは、その時の状況を見て決めます」

「でしょうね」

 張り詰めていた呼吸が、ようやく緩んだ。律も、それ以上は何も言わなかった。

 病院の正面玄関前は混んでいた。

 タクシー、送迎車、介護車両、一般車。人の
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  • 身代わりで嫁いだ偽令嬢は、怪物当主だけが本当の私を選ぶ   第2話 家を救うため、私を差し出すそうです

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